1. 概要
米は日本の主食である。料理工学の記念すべき初レシピは、炊飯である。たかが炊飯と侮るなかれ、いつでも同じ炊きあがりとなる炊飯レシピを構築する。なお、電気炊飯器は使わず、鍋を使って炊く。電気炊飯器を使わない理由は、使用後の機器洗浄が面倒なのと、1合(精製米150g相当)以下の炊飯が上手くできないからである。
2. 詳細
2.1 材料および機器
材料 | 質量 [g] | 質量計算式 | 許容誤差 | 備考 |
---|---|---|---|---|
精製米 (コシヒカリ) | $$ A $$ | $$90 \leq A \leq 130 $$ | $$ \pm 1 \% $$ | 1合=150g |
水道水 | $$ B $$ | $$ 1.42A $$ | $$ \pm 1 \% $$ | 精製米を洗米後、十分浸水させると浸水米の質量は \(1.33A\) となり、\(0.33A\) の水道水が吸収される。これに \(1.09A\) の水道水を加えて炊飯する。 |
合計 | $$ A+B $$ | $$ 2.42A $$ | $$ – $$ |
鍋には精製米+水道水で合計 \(2.42A\) 入れることになる。
俺が検証した範囲は \(90 \leq A \leq 130 \) であり、この範囲では問題ないことが分かっている。なお、今回使用する鍋(図2.1-1(a))の最大炊飯量は150g(1合)である。
機器 | 詳細 | 備考 |
---|---|---|
鍋 | STAUB La Cocotte de GOHAN 12cm | 図2.1-1(a) |
質量計 | TANITA デジタルクッキングスケール KJ-212 | 図2.1-1(b) |
ボウル | 藤井器物製作所 3way水切りボウル | 図2.1-1(c) |
(a):STAUB La Cocotte de GOHAN 12cm
(b):TANITA デジタルクッキングスケール KJ-212
(c):藤井器物製作所 3way水切りボウル
図2.1-1:使用する機器
2.2 工程
精製米 \(A\) を計量し、ボウルを使って洗米する。なお、洗米時間は2min以内とする。
洗米方法や時間は人によって様々だと思うが、今回は時間制限を設けることで最低限の標準化を行う。
水温が10.5℃以上ならば、浸水時間は30minでよい。水温が10.5℃未満の場合、60minで問題ないと思うが、浸水米の質量が \(1.33A\) になっていることを確認すること。(詳細はこちらのページ)
鍋に浸水米を入れ、浸水米+水道水の質量が \(2.42A\) となるように水道水を入れる。以前の検証から、120gの精製米を十分浸水させると160g (1.33倍)になることが分かっている。すなわち、浸水米 \(1.33A\) に対し水道水を \(1.09A\) 加える。そして、蓋なしで強火にかける。鍋の内壁に大きな気泡ができ沸騰を確認したら次工程に移行する。所要時間の目安は5minである。蓋をしない理由は、沸騰状態を確認できないからである。
弱火:火が消えない最小ガス流量
https://trainingday.page/birth-of-culinary-engineering
強火:なべ底から火がはみ出ない最大ガス流量
中火:弱火と強火の指示値の半分のガス流量
図2.2-1:強火
図2.2-2:鍋の内壁に大きな気泡ができた状態
( \(A =120\rm{g} \) とした )
蓋をして、弱火で10min保温する。
図2.2-3:弱火
消火し、10min放置する。
図2.2-4:完成
( \(A =120\rm{g} \) とした )
2.3 温度計測結果
炊飯中の米の温度を計測する。セットアップを図2.3-1に、結果を図2.3-2に示す。なお、\(A =120\rm{g}\) とした。
温度履歴を見ると、最高温度すなわち沸点は水と同じ100℃であることが分かる。
また、消火後に注目すると、約4minの間、100℃を維持していることが分かる。加熱を止めたのに米の温度は100℃を維持しているということは、消火時点で鍋自体の熱容量平均温度は100℃より高温で、消火後は鍋外表面から外囲環境への放熱および鍋から米への熱伝達が同時に起こっており、鍋の熱容量平均温度が100℃を下回るまで、米は100℃を維持できるのだろう。たしかにこの鍋は鋳物で質量も1kg以上あって重く、見るからに熱容量は大きい。
炊飯にとって消火後の放置時間いわゆる「蒸らし」の温度がどれほど重要かは分からないが、少なくともSTAUB鍋では90℃以上を維持していることが分かる。
(a) 全体図
(b) 昇温中
(c) 保温中
図2.3-1:試験セットアップ
図2.3-2:炊飯中の米の温度履歴
( \(A =120\rm{g} \) とした )