人生が楽になるお味噌汁の作り方

1. 概要

YouTubeで暇つぶししていたところ、「人生が楽になるお味噌汁の作り方」というタイトルが気になり、視聴した。5分程度の動画だが、そのメッセージ性に驚嘆し、また彼の人生や考え方にも興味が及ぶような、秀逸な映画を1本見たくらいの感動を得た。しかしこれは料理動画である。なぜこんなにも魅力的な内容になっているのか、みていきたい。

この動画を見たのは1ヵ月以上前だが、その日以来、ほぼ毎日味噌汁を作って食べている。それまで、最後に味噌汁を作ったのは10年以上前であった。

2. 詳細

まずは動画を見よう。

図2.1:土井善晴が教える人生が楽になるお味噌汁の作り方① @情熱大陸 公式チャンネル

「人生が楽になるお味噌汁の作り方」というタイトルからして、時短テクニック系の内容かと思い、見始めてみる。まず土井氏の柔和な語り口からスタートし、いきなり包丁の刃を上に向けて茄子を切るという高等テクニックが出てくる。また、小型の包丁(ペティナイフというらしい)の切れ味が凄まじい。

図2-2:刃を上に向けて茄子を切る様子

真っ二つに切られたピーマンを入れる。味噌汁にピーマン?しかもヘタと種を取らずに?ますます興味が湧いてくる。

図2-3:ピーマンをそのまま真っ二つに切る様子

続いて、にんじん。なるほど、そういう切り方があるのか、と新鮮な驚きがある。また、相変わらず凄まじい切れ味の包丁である。

図2-4:にんじんをささがきにする様子

そして、肉を切らずに入れる。この辺から、この動画のもう一つの側面が見えてくる。そして、おそらくはそちらの側面が主であろう。

図2-5:肉を切らずに入れる様子

図2-6:語り

まな板、これなんてもう、汚すのを一瞬ためらうわけやな。それやったらもう、これでお肉が入りましたと。まな板汚さずに済んだみたいな話やけど。

みんなね、気に留めるのは、まな板汚さへんいうことばっかり気になってしまうんや。

でも実際はそんなこと、どうだってええこと。今ハサミでも手でちぎってもいいっていうことなんです。

YouTube「土井善晴が教える人生が楽になるお味噌汁の作り方①」@情熱大陸 公式チャンネル

まな板を汚すのは嫌だ、というのは料理をしていれば考えてしまうことである。それがストレスになるのなら、使わなくていいじゃないか、いつも包丁で切らなきゃいけない決まりはないのだから。

土井氏の語り口調と背景の音楽も相まって、彼のいわんとすることが、まっすぐ入ってくる。そして、ここでタイトル「人生が楽になるお味噌汁の作り方」の意味をようやく理解する。これは味噌汁の作り方であり、人生のそれと一緒なのだ、と。

図2-7:茶碗一杯の水を入れる様子

料理の話に戻り、今まで切った材料を茶碗に入れていた理由がここで判明する。そうか、食べる茶碗で材料や水を測れば、1人前きっちり作ることができる。なんという合理的な方法なのだろうか。

俺が最後に味噌汁を作ったのは10年以上前だが、作るのを辞めた理由の一つは、一人分を作るのが難しかったからだ。そして、現代の食事は栄養が豊富だから味噌汁は不要、などという理由で今まで作らなかった。しかし、この動画を見た瞬間から、無性に作りたくなってきた。

図2-8:味噌の取り方

こんな小さい泡だて器があるのか、という発見と、なぜ味噌をそれで取るのか、と言う疑問が湧いてくる。しかし直ぐに分かる。

図2-9:味噌の溶かし方

なるほど、こうやって溶かすと楽だな。合理的な味噌の取り方である。

人生の話へと広がる味噌汁の作り方に感動したかと思えば、料理に関する根本的な驚きや発見もたくさん見つかる。俺はもう土井氏の一挙手一投足から目を離せなくなっていた。

まだ茄子煮えてないのに。上に外に出てたら煮えてへん。でも煮えますから、蒸気で。

そんなことさえ、気になくっていいわけでしょ。

でもこれって、みんなが、実際の身近にやってることと一緒やねん。

YouTube「土井善晴が教える人生が楽になるお味噌汁の作り方①」@情熱大陸 公式チャンネル

いつも完璧に毎日を過ごしているわけではない。だから、料理だけきちんとしなければいけないわけでもない。言われてみると当然のことだが、なかなか気づけないものである。俺は「料理工学」なるものをやっているのだが、毎回材料の重さを計測したり時間を測ったりするのは確かに面倒でストレスになっている。そんな風になるのなら、ときどきはこういう作り方も良いのかもしれない。ましてや、数人分の食事を毎日作らなければならない主婦にとって、救いの言葉ではないだろうか。

図2-10:灰汁を取る取らないの話

ここで、灰汁を取るとか灰汁取らないとか、どっちでもいいんです。取るの忘れたっていいんですよ。この灰汁なんてもう大したことないから。

この肉がひっついてるのほぐしたいなんていうことさえ、要らないわけでしょ。

YouTube「土井善晴が教える人生が楽になるお味噌汁の作り方①」@情熱大陸 公式チャンネル

今までの料理が ver.1.0 だとすると、土井氏の語る料理は ver.2.0 である。それぐらいレベルが違う。

日常生活でやっているのと同じように、料理にも取り組んだらいいのではないか、ということだろう。これは単なる時短テクニックとは一線を画するものである。

時短テクニックというものは、「料理」を実施しなければならない「作業」と見做し、いかに効率よく美味しく作るか、という方法論である。一方、土井氏の語る料理は、日常生活と区別することなく、自然な成り行きとして料理をする、という考え方である。別に時短テクニックを否定するわけではないが、俺は土井氏の考え方が好きだ。もしかすると、現代の料理より遥か以前のそれは、そういうものだったのではないだろうか。

図2-11:味噌汁は煮立ててはいけない?

だからセオリーとしたら、味噌汁は煮立ててはいけない、というこやけども、それはさらりとした味噌のおつゆだけの香りを味わおうかというようなことが目的の場合。

これは、具だくさんでいろんなものが、味噌汁だけじゃなくて茄子からもお肉からも、いろんなもんが水溶液として、旨味として出ていきますので。

そしてそういうようなものの相対のおいしさ言うのが具だくさんの味噌汁です。

YouTube「土井善晴が教える人生が楽になるお味噌汁の作り方①」@情熱大陸 公式チャンネル

一体、俺の目から何回鱗が落ちるのか。そういう味噌汁もあるのだな。

図2-12:出来上がり

さあ、この動画を見たなら、その日のうちに味噌汁を作ろう。

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