その時間さえ待ち遠しくなる HENSON AL13 レビュー

1. 概要

日頃使っていた電動シェーバーが寿命を迎えたので、替わりのものを探していたところ、両刃カミソリの存在を知った。中でもデザインに惚れた HENSON AL13 を購入し使用している。その切れ味は凄まじく、久々にモノに感動したのでここに記す。

2. 詳細

2.1 カミソリ遍歴

まず、俺のカミソリ遍歴を話そう。

初めて自分で髭剃りをしたのは、中学生くらいだったろうか。普通のT字カミソリを使っていたと思う。当時はまだ髭は薄く、とくに髭剃りに難儀することは無かった。

大学生になると髭は硬くなり、T字カミソリの中でもやや高めの gillette 等を使用していた。このとき、5枚刃のものを使っていたが、適度に刃を交換しなければならず、面倒くさがりの自分は2週間~1ヵ月は同じ刃を使用していた。たしかに刃の切れ味は悪くなり、最後の方はかなり力を入れて押し当てていたので、たまに流血することがあった。

社会人になって初めて電動シェーバーを購入した。これは主に上記の流血回避と、刃の交換頻度を考えてのことだった。購入した電動シェーバーは1万円未満の安いものだったが、当初の目的 (流血回避、刃の交換長め) は果たしてくれた。刃の交換は、基本的に外刃に破れが生じた際に、内刃と合わせて交換となり、自分の場合は約2~3年に1回の頻度であった。一方で、以下の不満点があった。

  • 剃り心地はイマイチ。(電動シェーバーの構造上、外刃の厚み分は必ず剃り残しができてしまう)
  • 剃った髭が内部に溜まるので清潔感に欠ける。(水洗いでほとんど落とせるが、使う度に洗うのは面倒)
  • 充電が面倒くさい。(独自ACアダプター必須。使用年数を重ねるとバッテリーが劣化し、数回の使用しか持たない)

2.2 両刃カミソリ HENSON AL13

最近まで使用していた電動シェーバーが寿命を迎えたので、代替品を探すことにした。

まずは同じ電動シェーバーで探してみるが、どれも同じような代物に見える。せめて充電が USB-C のものはないのかと探すが、独自のACアダプター採用がほとんどである。ならば剃り心地や洗浄のしやすさを求めると、4~5万円は覚悟しなければならない。たかが髭剃りにそんな金を掛けるのもな・・・と思い、では昔使ったT字カミソリに戻るか、と揺らいでいたところ、両刃カミソリ HENSON AL13 の存在を知ることになる。

図2.2-1:【一生モノがマイナーチェンジ】超精密構造シェーバー HENSON SHAVING(ヘンソンシェービング) 剃り比較と6カ月経過レビュー @ダンディM

刃の枚数が正義とでも言わんばかりな市場に1枚刃で突っ込んできた潔さと、その形態の美しさに惚れ、俺は購入を決意した。HENSON AL13 には刃の出代が異なる3タイプがあり、刃の出代が小さい順にMILD<MEDIUM<AGGRESSIVE となる。俺は MILD を選択したが、後で述べるようにこれで良かったと思う。価格はいずれも 16400円 である。

まず、構造を見てみよう。全ての部品を図2.2-2に示す。

図2.2-2:HENSON AL13 (MILD) 全部品

図2.2-3:組み立て後

素材は主にアルミニウム合金であり、一部にタングステンが使われている、オールメタル製である。一方、金属ではあるが軽量なアルミニウム合金のため、見た目によらず軽い。

また、刃先の角度や出代の精度を出すために、精度の高い加工を行っている。これは、図2.2-2に示す部品表面に縞模様が確認できることから、鋳物ではなく、NC旋盤を用いた削り出し加工を行っていることが分かる。すなわち、部品より一回り大きな金属塊から削り出して一個一個の部品を作っているというこである。また柄の部分のローレット加工も非常によく、単に側面に溝を付けているのではなく、ローレット加工の模様部分の高さが周囲より高くなっており、シェービングフォームで滑りやすくなった手で持っても、しっかりとグリップできる。

刃のセットは、2つの部品で挟み込み、ネジで締め付けることによって実施する。組み立て後は刃はアーチ状に湾曲し、鋭角で刃が出るとともに、このアーチの反力がネジのスプリング相当の役目も果たしている。

さて、いよいよ髭を剃ってみると、まず凄まじい切れ味に驚く。

そもそも刃物というものは、これくらいの切れ味を持っていることを再認識させられる。
少年が初めてナイフを扱うとき、少女が初めて包丁を扱うときと同じくらいに慎重にこのカミソリを扱わなければならない。似たようなヤバい切れ味としては、砥石で手入れされた鋼の片刃包丁、大工道具のカンナやノミ、日本刀などがあるが、日常生活で体験できる機会は限られている。カッターや市販品の包丁、ハサミを「刃物」だと思っていると、このカミソリで怪我をするだろう。それくらいの凄まじい切れ味を持っている。

ただし、カミソリの刃自体は汎用品であり、最初はセットで数枚ついてくるが、替刃は自分で追加購入する必要がある。とはいっても1枚30円程度、交換頻度は数日~1週間で十分だろうから、安いものである。

肝心の剃り心地だが、至高である。

俺は髪を切るときは美容院ではなく床屋へ行くのだが、それは顔剃りをしてもらうためである。腕のよい床屋の顔剃りは気持ち良く、店によっては昔ながらの本当のカミソリ (ナイフみたいなやつ) でやってくれるところもある。今まで何件かの床屋に行ったが、それと比べても遜色ないほど、いや平均的な床屋の顔剃りを上回るレベルで、この HENSON AL13 は髭を剃り落してくれる。あまりに感動したので、購入してから 2~3日 は朝・昼・晩と3回も剃っていたほどである。

今まで朝の忙しい時間帯に嫌々やっていた髭剃りだが、その時間さえ待ち遠しくなる、そんな価値を与えてくれる代物である。

2.3 補足

図2.3-1に示すように、雄ネジの先端部に切れ込みが入っているが、これは仕様である。(メーカー確認済み)
しかし、一体何のためにこの切れ込みがあるのか、分からない。

図2.3-1:雄ネジ先端部の切れ込み (不良品ではなく仕様)

次に、剃り方について補足する。朝の忙しい時間の髭剃りには、本品は向かない。むしろその時間を楽しむとき、本品の本当の価値が現れるだろう。

  • 洗顔フォームまたはシェービングクリームを用いて滑るようにすること。
  • ネジは回らなくなるまで閉めること。(中途半端に閉めると刃が設計角度にならない)
  • 秒速1cmくらいでゆっくり刃を動かすこと。慣れてきたら速めてもよいが、横滑りすると出血は必至。
  • 力を入れないこと。本品の重量で押す程度、手は沿わせるだけで十分切れる。力を入れると出血は必至。
  • 切れ味が落ちてきたら刃を交換すること。
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