iPad Pro 11インチ (第3世代) と Apple Pencil (第2世代)

1. 概要

先日、標題の iPad Pro 11インチ (第3世代) と Apple Pencil (第2世代) を購入した。初の Apple 製品の購入となったが、その素晴らしさに感動したので、購入の経緯を含め紹介する。

2. 経緯

PCやスマホを持っている状況で、タブレットの存在価値はあるのか?

タブレットが世の中に出始めた頃、そんなことを思っていた。しばらくして自宅に nas を導入し、そこにミュージックサーバーを立てて、コントロール器としてタブレットを使うのがよさそうだ、と思い、安い中華タブレットを購入した。最初こそ使っていたものの、タブレットはその大きなサイズのせいで使う機会は減り、同じ操作ができるスマホに移行していったため、タブレットは立派な文鎮となった。

一方で、趣味の一つとして、数学を楽しんでいる。30代半ばとなった今、数学の力が本当に落ちている。高校時代あれほど勉強したのに、今ではそのほとんどを忘れているという事実が、どうにも悲しく、気づけば Youtube 等で入試問題の解説を見ているのである。本webページには数学や工学の記事が多いが、その記事を書くにあたっては、かなりの時間をかけて関連する数学分野を復習している。

高校時代、分かりやすい参考書を探すのに苦労したのだが、現代ではweb上に素晴らしい解説記事があったり、またYoutubeでも板書を含め実際の授業を受けている感じで聞くことができる。自分は今学生ではなく、勉強する必要も無いのだが、大人になってようやく勉強することの楽しさを感じ始めている。

そんなわけで、ときどき数学の勉強をするのだが、その際は紙にいろいろ書きながら理解していく。多い時には一度に10枚以上使うこともあって、一度理解した後は捨ててしまうのだが、それがもったいないな、と思っていた。紙を消費する「もったいない」ではなく、自分の書いたメモを破棄する「もったいない」である。数年経たてばそのとき理解した内容をまた忘れしまうだろうから、後から見返せるようにしたいな、と考えたのである。

そんな中、Youtube で iPad と Apple Pencil を用いた手書きを見て、これだ、と思った。電子メモの存在は iPad に限らず昔から知っていたが、書き心地は微妙であった。しかし、今回はどうやらすごいらしい。
iPadにはいくつかモデルがあって、上から順に Pro, Air, 無印 となる。いくつか動画を見て、iPad Air にしようと思ったが、念のため家電量販店で実機を触ることにした。

まず iPad Air を触る。なるほど、素晴らしい書き心地だ。これはもう紙とペンに結構近い。

次に iPad Pro を触る。やばい。ここ10年で一番感動したかもしれない。「やばい」しか言葉が出てこない。Pro と Air の差は画面のリフレッシュレートである。Youtube のレビューによれば、勉強用途のノート書きであれば Air で十分、と言われていたが、比べると明らかな違いが分かる。特に、数学の計算で鬼のようにペンを走らせるとき、違いははっきり表れるであろう。

以下、俺が Pro を購入するに至る脳内思考である。

  1. Air 64 GB が 6.9万円、上の 256 GB が8.8万円か。いい値段するな。
  2. Pro 128 GB が 9.5万円か。なら Air 256GB に7千円足すと買えるのか。
  3. なに、近々 Apple の新製品発表会があって、そこでAir の新モデルが出るのか。今 Air を買うのは時期が悪いか。(3/8に開催済みで、第5世代の Air が発表された)
  4. よし、Pro 買うか。なに、Apple Pencil が1.5万円だと・・・。
  5. 店頭で試しに触ってみるか → 感動して購入へ。

ちなみに Pro は11インチと12.9インチがあるが、後者はデカすぎたので11インチを購入した。もっとも、家で使うだけなら、画面サイズの大きい12.9インチの方がよい。俺は外に持ち運ぶ可能性も捨てきれなかったので、11インチとした。

3. 詳細

3.1 書き心地

前章に述べた通り、書き心地は最高に良い。また、ペーパーライクフィルム等の摩擦を増やすアイテムは不要であった。これを説明するには俺がどのような筆記用具を使ってきたかを説明した方がよいだろう。

俺の筆記用具遍歴だが、

  1. 小学生:鉛筆
  2. 中学生:鉛筆
  3. 高校生:シャープペンシル
  4. 大学生以降:低摩擦油性ボールペン(ジェットストリーム)

となっている。大人になるにつれて手に力を入れるのが面倒になり、低摩擦のボールペンを使うようになった。大学生になるのと同時期に発売されたジェットストリームを今でも使っている。大事なのは低摩擦であることと、油性であることである。水性インクは滑らかだが水が掛かると消えるので、公的書類には使えない。一方で油性は一般に摩擦が大きく、また玉詰まりも多かった。そんな中発売されたのが三菱鉛筆のジェットストリームである。ポールペンの歴史を変えたと言っても過言ではない。おすすめは、図3.1-1に示すものである。単色ペンだが、質量/重心の位置/太さが絶妙のバランスとなっている。替え芯も樹脂だから安い。

図3.1-1:三菱鉛筆 油性ボールペン ジェットストリームプライム 0.7 ブラック

ジェットストリームの唯一の弱点は消せないことである。だから誤字は上からグルグルと塗りつぶすしかなく、綺麗なノートは作れない。しかしどうだろう、綺麗なノートを作ることはどこまで重要だろうか。俺のノートはほぼ黒一色、たまに赤や青で少し書く程度である。授業中は居眠りもするからノートにはミミズのような線も時折走る。つまり、消せないことはそれほど弱点ではない。むしろ、綺麗にノートをとるリソースを、別のことに使う方がよいのではないか。

そういうわけで、俺の人生ではジェットストリームの使用遍歴が最も長く、それと iPad + Apple Pencil の比較になる。
Apple Pencil の書き心地はジェットストリームとほとんど変わらない。一方で、Apple Pencil の書き心地がツルツルしているせいで、摩擦を増やすために iPad の画面にペーパーライクフィルムを貼る人が結構いるそうだ。おそらく、こういう人達はシャープペンシルのような大きな摩擦に慣れているのだろうと思う。摩擦の強さでいうと、

シャープペンシル > 鉛筆 > ボールペン

だと思う。鉛筆を使う機会は滅多にないと思うが、たまに使うとその滑らかさに驚くだろう。シャープペンシルの芯は、あの細さで強度を持たせるためにいくつか混ぜ物をしているので、鉛筆より摩擦は大きくなるようだ。

ともかく、ジェットストリームのような低摩擦に慣れている人なら、摩擦を増やすためのフィルムは不要だと思う。というか、こういう機器は裸で使うのが俺のポリシーである。フィルム以外にケースもあるが、本来、裸で使って最大性能を出せるように作られるべきだし、ユーザーもいろいろつけるべきではない。しかし、昨今の形態はそうならない部分もあって、自分もケースを付けてしまっている。これについては後述する。

3.2 形状

性能も重要だが、形状も同じくらい重要である。それは、使いやすさや所有欲を満たしてくれるかどうか、ということである。

まず、全体的な質感はよい。いや、このサイズで約10万円するのだから当然である。しかし、なんだ、このカメラの出っ張りは。iPadに限った話ではないが、昨今のスマホ類はカメラが出っ張っていて、ケースを付けて完成する、そんなイメージがある。

スマホはまだよいが、iPad は机にべた置きしてノートのように使うことも想定しているのだから、こんな出っ張りがあったらカタカタするし、手を乗せて書くのだから、カメラや筐体に変な力が掛かって曲がったりしないか心配になる。

前節で述べたように、こういう製品は、発売されたその形態が最も望ましく作られるべきである、というのが俺の考えである。ケースを付けて完成するなら最初からつけとけ。いや、ケースを剥いだ生の状態のカメラの出っ張りはやはりダサすぎるから、カメラを底面と面一にするか、カメラが底面で接触してレンズに傷が入ることをメーカーが危惧しているなら、カメラ部を少し凹ませるか、筐体の縁をコンマ何ミリかせり上げればよい。そのことで筐体の板厚が太くなってもよいだろうに。

また、iPad を机にべた置きすると、持ち上げにくいのも気になる。結構な質量の板がビタっと置かれるので、単純に掴みどころが無く、持ち上げにくいのである。これも、側面に引っ掛かりを作るか、僅かに丸みを持たせるだけでかなり違うと思う。

そんなわけで、質感はよいが、生の状態では使いにくい端末である。よって、本意ではないが、自分はカバーをつけてカメラの段差を無くして使っている。

余談だが、スマホは Pixel 4a を使っていて、総合バランスに優れる名機だと思うが、ケース無しだと手から滑りやすく、ストラップを付けようにも通し穴が無いから、結局ケースをつけて使っている。

3.3 使用例

使用例をいくつか紹介する。

まず、pdfへの書き込みである。図3.3-1は、伝説となった今年の大学入学共通テスト 数学ⅠA に書き込んでいるところである。この試験については別記事で示すが、俺は 20点 (100点満点中) だった。つまり1/5しか解けなかったのである。図は、解説を見ながら記入したもので、俺の答案ではない。この単元では、俺は正弦定理を忘れていて、このページの問題は丸々落としている。

こういう風に余白に書き込めるから、印刷して手書きする手間が省ける。

図3.3-1:使用例(1) pdfへの書き込み

余白が足りなければ、ページを追加できる。

図3.3-2:使用例(2) pdfへのページ追加

普通にノートを書くとこんな感じになる。ごちゃごちゃする数式もストレスなく書くことができる。ノートが黒字に白なのは、俺の趣味である。目が疲れるので、長時間見続けるものは基本的に黒背景としている。

図3.3-3:使用例(3) ノート記入

4. おわりに

いろいろ不満も書いたが、それを考慮しても iPad Pro 11インチ (第3世代) と Apple Pencil (第2世代) の組み合わせによる書き心地は素晴らしいものがある。ようやく紙に追いついた感があるが、こんな技術はもっと早く世の中に出なかったものだろうか。やはり、現代ほどのCPUやその他技術が必要だったのだろうか。

タブレットでできることはPCでもスマホでもできるが、唯一 iPad にしかできないことは、手書きメモである。そのためだけに存在していると言ってよいだろうし、そのためだけに買う価値はあった。Pro は他にも動画編集とかいろいろできるが、そんな作業はPCでやった方がよい。つまり、PCやスマホを持っている前提で真価を発揮する端末である。

一方で、紙とペンは未だ最強の文房具である。電子メモは便利だが、汚い環境では使えないし、このデータが100年、1000年先に残るかは分からない。また、現代になっても機器の故障はあり得る。使いたいときに何らかの不具合で起動できない可能性もある。さらに、IPad Pro の画面リフレッシュレートは最高120Hzであり、今後も向上していくと思うが、紙とペンのリフレッシュレートは無限であるから到底敵わない。

上記を理解した上で、利便性をとるなら、iPad と Apple Pencil による電子メモは、生活を豊かにしてくれるだろう。

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